
過敏性腸症候群・炎症性腸疾患
過敏性腸症候群・炎症性腸疾患について
過敏性腸症候群(IBS)とは

過敏性腸症候群(IBS)は炎症性腸疾患(IBD)、つまり潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)と症状に似た点があるのですが異なる疾患です。
IBDの患者がIBSも併発していることもあり、内視鏡で異常はみられなくないケースでも下痢や腹痛などの消化器症状が場合、過敏性腸症候群による可能性があります。
IBSとIBDの診断が曖昧だと必要の無い漫然とした投薬治療によって、症状の遷延化や悪化・投薬の副作用にさらされることにもなりかねません。
過敏性腸症候群(IBS)が炎症性腸疾患(IBD)と異なる点

◇過敏性腸症候群(IBS)においては内視鏡検査における消化管の炎症所見(-)
◇IBSにおいては血便、粘血便は見られない。
◇IBSに対しては外科手術の実施やステロイド剤・免疫抑制剤などの強い薬剤の使用が必要となることはない。
◇炎症性腸疾患においては腸の病変部や合併症の発症部位に痕跡が残ることがあるが、IBSにはない。
◇IBSでの大腸がんリスクが高くない。
◇IBSはIBDと比べて身体的に深刻な疾患ではないが、QOLを著しく低下させ社会生活に大きく支障を与えることがある。
過敏性腸症候群(IBS)の症状

◇腹痛
◇腹部の不快感
◇下痢(血便、粘血便は伴わない)
◇便秘
◇下痢と便秘の繰り返し
◇粘液便の増加
◇ガスの増加
◇腹部膨満感
◇吐き気
◇渋り腹
過敏性腸症候群(IBS)の合併症

◇線維筋痛
◇慢性疲労症候群
◇慢性の骨盤痛
◇顎関節症
過敏性腸症候群(IBS)の診断方法
◇腹痛や腹部不快感が長期にわたっていないか?
◇排便によってそれらが収まることはあるか?
◇便の回数や便の形状はどうか?
IBSの疑いがある場合に更に血液検査、便検査、内視鏡検査、X線検査、心理テストなどによってIBS以外の疾患の除外診断によって最終的にIBSであるとの診断がつけられます。
過敏性腸症候群:IBS = Irritable Bowel Syndrome
炎症性腸疾患:IBD = Inflammatory Bowel Disease
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腸内フローラ移植
私たち現代人の腸内には1000種類・100兆個以上の腸内細菌が絶えず菌交代をしながら生息しています。
多種多様な腸内細菌の生態系は、顕微鏡で覗くとお花畑に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれたり、腸内細菌全体という意味で「マイクロバイオーム」と呼ばれています。
ヒポクラテスは「すべての病気は腸から始まる」という言葉を遺しており、近年は腸脳相関(brain-gut interaction)や病巣感染症(focal infection)という全身の臓器や諸器官のネットワークや感染概念が提唱されています。
消化・吸収・排泄機能を司る腸は「第2の脳」ともいわれている様に、腸が脳と独立して独自で考えることもあり、代謝や合成・免疫応答などに関与しています。
最近の長寿解析研究によると、長寿遺伝子よりも環境要因、とりわけ腸内フローラの関与が健康長寿関与が重要で、腸-マイクロバイオータ-脳の三者間における神経内分泌などの情報交換は心身の健全性に不可欠といわれています。
腸内フローラは神経や免疫に必須の成長因子を含んでおり、その不均衡は便秘や下痢など大腸疾患に及ぶだけでなく、口腔から肛門まで消化管全体の細菌叢バランスに関与し、アレルギー疾患や膠原病、自閉症・鬱や認知症、糖尿病・高血圧やがんなど、様々な病態の制御に関わっています。
腸内細菌叢の構成は、とりわけ小児期での心理・精神状態の形成に深く関与しており、食事などの生活習慣だけでなく、薬剤などの化学物質、気象変動や電磁波まど体内外環境の変化にも大きく影響されます。
生活様式の多様化に伴ない一度崩れた腸内細菌叢をとり戻すことは年々困難になっており、除去食や水溶性食物繊維、プロバイオティクス、アンチバイオティクス(抗生剤)・土壌菌移植など、従来型の治療では適切な腸内細菌の定着や発酵、短鎖脂肪酸の生成が充分でないケースが増えてきました。
欧米では2013年に健康な人(スーパードナー)腸内フローラを移植する方法がオランダの治験で成果をあげ、米国のFDAでは通常医療として承認された後に、我が国でも数年前から大学病院などで、近親者・配偶者・知人をドナー対象とした腸内フローラ移植が行われています。
「一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会」では2009年の第1例目を皮切りに、当院をはじめとする移植提供医療機関では、これまで千例以上の臨床例に「腸内フローラ(糞便微生物)移植」を実施して来ました。
同研究会ではドナーバンクから厳選した移植菌液を独自の溶解方法によって調合することで、従来型のFMT(糞便移植)に比べて菌の定着率が格段に高まり、フローラバランスの早期改善と定着化がみられております。
腸内移植対象者は事前に腸内フローラバランスを便検査によって確認したのち、ドナーバンクに在籍するドナーから提供された移植液を厳選し、1週間おきに3回から6回に分けて注腸方式によって肛門から大腸全体に菌液を注入します。移植完了後には再び腸内フローラバランスの定着と推移や、心身の変化や諸症状の改善を確認します。
同研究会での腸内フローラ移植は、慢性便秘症、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病、消化管ベーチェット、腸ヘルニアをはじめ、アトピー性皮膚炎、更年期障害、膠原病、自閉症、(躁)うつ病、パニック障害、線維筋痛症、自律神経失調症、高血圧、高脂血症、糖尿病、甲状腺疾患、各種がんや悪性リンパ腫、多発性硬化症、パーキンソン病などを対象におこなわれており、現在も移植の適応疾患は増えつつあります。
当院では、世界初の「構造化腸内フローラ移植(IFMT)」に成功し、ターゲットとなる腸内細菌や疾患・症状別の移植効率を高めています。
「山陰健康百寿プロジェクト」では、「何を食べれば自分はどうなれるのか」、健康長寿への生活習慣を意識できる未来社会の創造のために「弘前大学COIプログラム」や「京丹後長寿コホート研究」などを継承しながら、日本最古の医学書「医心方」や「出雲國風土記」など郷土史から現代までの食養・薬草文化を紐解き、壌菌の生育環境や生態系の変遷や住民の食生活と、口腔内~腸内細菌叢の探究を、地域住民のご協力のもと島根・鳥取各地で深めています。
